けいれん対応はどこを見る?安全確保・発作時間確認・報告までの看護の流れ
けいれん 看護 対応で迷いやすい発作中の安全確保、発作時間の測り方、口に物を入れない対応、発作後観察、医師報告と記録のポイントを整理します。
ベッドサイドで突然、患者さんの腕がつっぱり、返事が途切れ、体が大きく揺れ始めた。新人看護師がけいれん対応で固まりやすいのは、何かを「すぐしなければ」と思う一方で、何をしてはいけないかが頭から抜けやすいからです。
けいれん対応の中心は、発作を力で止めることではありません。患者さんがぶつからないように周囲を整え、発作時間を確認し、呼吸・顔色・意識の戻りを観察し、必要時に医師やリーダーへ早くつなぐことです。ここを外さなければ、慌ただしい場面でも安全に寄せられます!
この記事では、病棟や外来でけいれん発作に気づいた看護師が、最初に見ること、発作中にしないこと、発作後の観察、報告と記録までを整理します。日本看護協会の看護業務基準が重視する安全・安心の看護実践に沿って、患者さんを守るための具体的な視点に絞ります。
なお、けいれんの原因は、てんかん、発熱、低血糖、脳血管障害、薬剤、電解質異常、頭部外傷などさまざまです。この記事だけで診断や治療方針を決めるものではありません。強い症状がある、発作が続く、普段と違う状態が残る、判断に迷う場合は、所属施設の急変対応基準に沿って医師へ報告し、外来や在宅では救急要請も含めて安全側に動いてください!
🧯 けいれん対応で最初に守るもの
けいれん対応で最初に守るものは、患者さんの体と呼吸です。薬剤準備や細かな記録より先に、ぶつかる物を離す、頭部を守る、発作開始時刻を見る、応援を呼ぶ。この順番で考えると、最初の数分の動きが整理しやすくなります。
発作を力で止めようとしない
けいれんが始まると、反射的に手足を押さえたくなることがあります。しかし、強く押さえつけると、骨折、脱臼、皮膚損傷、ルート抜去、看護師自身の受傷につながるおそれがあります。発作そのものを腕力で止める対応は、看護師が目指す安全確保ではありません。
行うのは、患者さんの動きを無理に止めることではなく、動いてもぶつからない環境を作ることです。ベッド周囲の硬い物、点滴台、椅子、オーバーテーブル、床頭台の角、ナースコールのコードなどを確認します。ベッド上なら転落を防ぐ位置取りをし、床上なら頭を守れるものを安全に当てます。まず外傷を防ぐ、ここが最初の安全です!
発作開始時刻と呼吸を見る
発作時間は、医師が緊急性を判断するうえで重要な情報です。ただし、秒単位で完璧に測ろうとして患者さんから目を離す必要はありません。時計や電子カルテ端末、ナースコールの履歴など、使えるものを見て「気づいた時刻」を押さえます。開始を見ていない場合は、推測で書かず「発見時刻」として残します。
同時に見るのは呼吸と顔色です。胸郭の動き、いびき様の呼吸、唾液や吐物、チアノーゼの有無、酸素投与中ならチューブの位置を確認します。発作中は測定値だけに固執せず、見て分かる呼吸の変化を拾います。呼吸が戻らない、顔色が悪い、分泌物で気道がふさがりそうな場合は、すぐに応援を呼ぶ場面です。
応援を呼ぶ判断を早くする
けいれん対応は、ひとりで完結させる場面ではありません。患者さんの安全確保、時刻確認、バイタル測定、酸素や吸引の準備、医師への連絡、家族対応、記録は同時に発生しやすいからです。新人看護師ほど「自分で何とかしなければ」と抱え込みがちですが、早く人を呼ぶことも技術の一つです!
呼ぶ目安は、発作が長引く、発作を繰り返す、呼吸や顔色が戻らない、転倒や頭部打撲がある、妊娠中や小児など配慮が必要、初めての発作と思われる、基礎疾患や抗凝固薬内服などでリスクが高い、というような場面です。細かな基準は施設で異なるため、最終的には所属施設の急変対応基準に従います。迷った時点でリーダーへ声をかける方が安全です。
🛏️ 発作中の観察と安全確保
発作中は、細かい原因検索より安全確保と観察の優先度が高くなります。見たことをあとで説明できるように、体のどこから動いたか、左右差があるか、目の向き、呼吸、顔色、外傷リスクを短く押さえます。
口に物を入れない
けいれん対応で特に誤解されやすいのが、口の中への対応です。「舌を噛まないように」とタオル、舌圧子、指、ペンなどを入れる対応は避けます。歯や口腔内を傷つける、異物で窒息する、看護師が噛まれるといった危険があるためです。
口の周りに唾液や吐物がある場合は、患者さんの状態と自分の安全を見ながら対応します。見えている異物を安全に除ける場合は除去を考えますが、無理に口をこじ開けたり、奥へ指を入れたりしません。発作が落ち着いてから、必要時に吸引や口腔内確認を行います。焦って口へ物を入れないことは、重要な事故予防です!
頭部と周囲を守る
けいれん中の外傷で注意したいのは、頭部打撲、転落、ベッド柵への衝突、ライン類の抜去です。ベッド柵を上げるだけで安全になるとは限りません。硬い柵に頭や四肢が当たる場合もあるため、クッションや枕を使える環境なら、頭部を守る位置に入れます。
患者さんが椅子やトイレ、廊下、検査室で発作を起こした場合は、転倒後の外傷確認が重要です。頭を打った可能性、出血、打撲、痛み、嘔吐、意識の戻り方を観察します。頭部外傷が疑われる、抗凝固薬内服がある、意識の回復がいつもと違う場合は、軽く見ずに報告します。
側臥位と気道確保は安全にできる範囲で行う
発作中や発作後は、唾液や吐物による気道閉塞に注意します。安全にできる範囲で顔を横に向ける、発作が落ち着いたら側臥位にする、衣類や寝具で胸郭の動きが妨げられていないかを見る、といった対応が基本になります。
ただし、強いけいれんが続いている最中に、無理に体位変換をしようとすると、転落や四肢損傷につながることがあります。安全に動かせる人員がいるか、ベッド幅やチューブ類に余裕があるかを見て判断します。気道を守るための体位調整も、患者さんを傷つけない範囲で行うことが大切です。
観察は「けいれんの形」と「全身状態」に分ける
医師へ伝える情報は、専門用語で飾るより、見た事実を分けて伝える方が役に立ちます。けいれんの形としては、全身か一部か、左右差があるか、眼球偏位があるか、意識消失があるか、尿失禁や咬舌があるかを見ます。
全身状態としては、呼吸、顔色、SpO2が測定できる状況ならその値、脈拍、血圧、体温、血糖測定の必要性、外傷の有無、点滴や酸素チューブの状態を見ます。測定できないものを無理に埋める必要はありません。安全確保を優先し、あとから確認した情報は時刻と一緒に残します。
🔎 発作後の看護で見ること
けいれんが止まった後も、対応は終わりではありません。発作後は、眠気、もうろう状態、頭痛、筋肉痛、嘔気、失禁、外傷、呼吸状態の変化が残ることがあります。落ち着いたように見えても、回復過程を観察して医師へつなぐ時間です。
意識が戻る過程を観察する
発作後に眠る、ぼんやりする、返答が遅い、状況が分からないという変化は起こり得ます。大切なのは、時間とともに回復しているか、普段の患者さんと比べて明らかに違う状態が続いていないかを見ることです。
声をかけるときは、強く揺さぶって無理に起こすのではなく、名前を呼ぶ、ここがどこかを短く伝える、呼吸と顔色を確認する、痛みやしびれを聞く、といった順に進めます。片麻痺、強い頭痛、繰り返す嘔吐、意識の回復不良、呼吸状態の悪化があれば、早めに医師へ報告します。
原因につながる背景を拾う
看護師が診断を決めるわけではありませんが、原因を考える材料を集めることはできます。発熱、低血糖の可能性、食事摂取、睡眠不足、内服忘れ、抗てんかん薬の変更、透析前後、飲酒、頭部外傷、感染症状、妊娠の可能性など、患者さんの背景によって確認したい点は変わります。
血糖測定や採血、画像検査、薬剤投与の要否は医師の判断や施設手順に従います。看護師は、発作前後の状況を具体的に渡せるようにします。「朝食を半分しか食べていない」「発熱が続いていた」「内服が遅れていた可能性がある」といった情報は、医師の判断材料になります。
患者さんへの説明は短く安心につなげる
発作後の患者さんは、何が起きたか分からず不安になることがあります。周囲に人が集まっている、衣類や寝具が乱れている、失禁がある、記憶が途切れている。その状況自体が大きなストレスです。
声かけは短く、事実と安心を分けて伝えます。「けいれんのような動きがありました。今は呼吸を見ながら安全を確認しています」「医師に報告しています。苦しさや痛みがあれば教えてください」と伝えると、患者さんは置いていかれにくくなります。恥ずかしさや不安への配慮も、発作後看護の大事な部分です!
家族や周囲への対応も患者さん中心にする
病室や外来で発作が起きると、同室者や家族も驚きます。家族から「大丈夫ですか」「なぜ起きたのですか」と聞かれることがありますが、原因や見通しを断定しないよう注意します。分かっている事実、現在の観察、医師へ報告していることを簡潔に伝えます。
患者さん本人のプライバシーにも配慮します。人が集まりすぎる場合は役割を整理し、不要な人を下げ、露出を整えます。けいれん対応では、救急場面の動きと尊厳を守る配慮を同時に行います。
📝 報告と記録は何を書くか
報告と記録は、発作が終わった証明ではなく、次の判断につなぐ情報です。発作の形、時間、発作後の回復、外傷、処置、報告先を残すと、次勤務や医師が状況を追いやすくなります。日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業でも、事例を通じて確認や共有の重要性が示されています。
発作時間は二段階で残す
発作時間は「けいれん様運動が続いた時間」と「意識や反応が戻るまでの経過」を分けます。たとえば、けいれん様運動が止まっても、呼びかけに反応しない時間が続くことがあります。この二つを一つにまとめると、状態の変化が伝わりにくくなります。
記録例としては、「10:14訪室時、全身性のけいれん様運動を認める。周囲物品を離し頭部保護。10:16けいれん様運動停止。10:20名前の呼びかけに開眼、返答不明瞭。SpO2、血圧、外傷の有無を確認しリーダーへ報告」のように、時刻と行動を並べます。正確に見ていないことは書きすぎず、「発見時」として残します。
SBARで短く報告する
急変場面の報告は、長いほど良いわけではありません。Situationで「けいれん様発作を認めた」、Backgroundで「てんかん既往あり、内服中」「初回と思われる」など背景、Assessmentで「現在は呼吸あり、意識もうろう、頭部打撲あり」など観察、Recommendationで「診察をお願いします」「追加指示を確認したいです」と伝えます。
新人看護師が困りやすいのは、全部を完璧に言おうとして報告が遅れることです。最初の報告では、発作中か止まったか、呼吸と顔色、発作時間、外傷、現在ひとりで対応しているかを優先します。不足情報は、応援を得てから追加で確認すればよい場面もあります!
記録は「観察」「実施」「報告」を分ける
記録では、観察したこと、実施したこと、誰にいつ報告したかを分けます。「けいれんあり、様子観察」だけでは、次の人が安全に引き継げません。けいれんの部位、持続時間、呼吸、顔色、意識、外傷、失禁、咬舌、バイタル、血糖測定の有無、酸素や吸引など、実際に確認できた範囲を具体化します。
一方で、見ていないことを推測で断定しないことも大切です。「てんかん発作と思われる」と書きたくなる場面でも、診断名として断定できない場合は「けいれん様運動」「意識消失を伴う発作様の状態」など、観察事実に寄せます。記録は自分を守るためだけでなく、患者さんの次の判断を守るものです。
ヒヤリは個人責任で終わらせない
けいれん対応では、発見が遅れた、時刻が曖昧だった、口に物を入れそうになった、ベッド周囲に硬い物が多かった、応援要請が遅れた、というヒヤリが起こり得ます。これを「自分が未熟だった」で終わらせると、同じ状況が残ります。
共有すべきなのは、誰が悪いかではなく、次に同じリスクを減らす方法です。発作時対応カードを見える場所に置く、ナースコール周辺の物品配置を見直す、発作既往のある患者さんの申し送り項目をそろえる、発作時間を誰が見るか役割を決める。小さな仕組み化が、次の患者さんを守ります!
❓ よくある質問
Q. けいれん発作に気づいた直後、最初に何を確認しますか?
まず周囲の危険物を離して頭部を守り、発作開始時刻を確認します。発作を力で止めるのではなく、呼吸・顔色・外傷リスクを見ながら応援を呼べる体制を作ります。
Q. けいれん中に口へタオルや舌圧子を入れてよいですか?
原則として入れません。歯の損傷、窒息、介助者の受傷につながるおそれがあります。見える異物があり安全に除ける場合を除き、無理に口の中へ手や物を入れないことが大切です。
Q. 発作時間はいつからいつまで記録すればよいですか?
発作に気づいた時刻、けいれん様運動が止まった時刻、呼びかけへの反応や意識が戻ってくる経過を分けて残します。正確な開始が不明なときは、推定せず「発見時刻」として記録します。
Q. けいれん後に医師やリーダーへすぐ報告するサインは何ですか?
発作が長引く、短時間に繰り返す、呼吸や顔色が戻らない、頭部外傷や転倒がある、意識の回復が普段と違う、判断に迷う場合は早めに報告します。外来や在宅では救急要請も含めて安全側に判断します。
Q. 発作後に眠っている患者さんは起こした方がよいですか?
強く揺さぶって無理に起こすのではなく、気道・呼吸・循環・外傷を確認しながら回復過程を観察します。意識の戻りが遅い、呼吸が不安定、片麻痺や強い頭痛などがあれば医師へ報告します。
あなたの次の一歩に
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療・看護判断に代わるものではありません。実施手順、報告基準、薬剤使用、救急要請の判断は、所属施設の手順書、医師の指示、公的情報を確認してください。
参考情報源
- 看護業務基準(2021年改訂版) (日本看護協会) アクセス日: Sat May 30 2026 02:00:00 GMT+0200 (Central European Summer Time) https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/gyomu/kijyun.pdf
- 医療事故情報収集等事業 事例検索 (日本医療機能評価機構) アクセス日: Sat May 30 2026 02:00:00 GMT+0200 (Central European Summer Time) https://www.med-safe.jp/mpsearch/SearchReport.action