RRT(迅速対応チーム)起動基準|コール判断と報告の手順
RRTはいつ呼べばよいか悩む看護師向けに、バイタル異常のコール基準・I-SBARCでの報告手順・コールをためらう心理的ハードルの乗り越え方を具体的に解説します。
「呼んでよかったのかな…」と悩みながら夜勤を乗り越えている、あなたの不安はまったく正常な感覚です!
病棟で患者さんの様子がいつもと違う。バイタルがちょっとおかしい。でも「コールするほどじゃないかも」と迷ってしまう——そんな経験、看護師なら誰でも持っているはずです。
この記事では、RRT(迅速対応チーム)をいつ・どんな基準でコールするか、コール後に何をするか、そしてどう報告するかを具体的にお伝えします。現場で判断に迷ったとき、手元に置いておける内容にまとめました!
🏥 RRT(迅速対応チーム)とは何か
RRTとは「Rapid Response Team(迅速対応チーム)」の略で、入院患者が急変する前の段階でベッドサイドに駆けつけ、早期介入するチームのことです。
従来の「心肺停止してから呼ぶ救急チーム(コードブルー)」とは異なり、RRTは急変の前兆を捉えて介入するために設けられた仕組みです。院内でこのRRTを含む広いシステム全体を「RRS(Rapid Response System)」と呼びます。
RRTの目的と構成
RRTの最大の目的は「予期せぬ院内死亡を減らすこと」です。研究では、心停止の多くは発生前6〜8時間以内に何らかのバイタル変化が観察されており、その段階で介入することで救命率が改善することが示されています。
チームの構成は施設によって異なりますが、典型的には集中治療医または当直医・ICU経験のある看護師(専門看護師や認定看護師が担うことも多い)・呼吸療法士などで構成されます。気管挿管などの二次救命処置をベッドサイドで開始できる体制を整えているチームをMET(Medical Emergency Team)と呼ぶこともあります。
RRSの4つの構成要素
RRSは大きく分けて、(1) 起動システム(看護師がコールできる仕組み)、(2) 対応チーム(RRT本体)、(3) 行政システム(運営管理・教育)、(4) 品質改善システム(データ収集・分析)で成り立っています。日本の病院でRRSを導入する施設は増加傾向にあり、2020年代以降は特定機能病院や急性期病院を中心に普及が進んでいます。
📋 RRTのコール基準——どのバイタルで判断するか
RRTのコール基準は「気になったらコールしてよい」という大原則のもと、バイタルサインの具体的な閾値が設定されています。 施設によって細部は異なりますが、国内外の多くの病院で採用されている基準を以下にまとめます。
バイタルサインの数値基準
以下のいずれかに該当する場合、RRTコールを検討します。
呼吸系
- 呼吸数が8回未満または30回以上
- SpO2(酸素飽和度)が90%未満(酸素投与中でも改善しない)
- 新たな呼吸困難・努力呼吸の出現
- チアノーゼの出現
循環系
- 収縮期血圧90mmHg未満
- 収縮期血圧200mmHg以上(新たな高血圧緊急症の疑い)
- 脈拍40回未満または130回以上(新たな症状を伴う場合)
- 新たな不整脈の出現
神経系
- 急激な意識変化(GCS2点以上の低下)
- 新たな神経学的症状(半身麻痺・言語障害など)
- 急激な転倒・けいれんの発症
その他
- 急激な尿量低下(0.5mL/kg/時間未満が2時間以上続く)
- 「何かおかしい」という看護師の直感(gut feeling)
MEWSとNEWSによるスコアリング
バイタルサインを点数化する「早期警戒スコア」を使うと、客観的な基準でコール判断ができます。
**MEWS(Modified Early Warning Score)**は呼吸数・SpO2・心拍数・収縮期血圧・意識レベル・体温をそれぞれ0〜3点で評価します。合計が4点以上でRRTへの相談・コールを検討するよう設定している施設が多いです。
**NEWS(National Early Warning Score)**はイギリスのRCPが開発したスコアで、日本でも採用する施設が増えています。呼吸数・SpO2・酸素投与の有無・収縮期血圧・心拍数・意識レベル・体温の7項目を評価し、合計7点以上または単一パラメータで3点に達した場合がコールの目安です。
電子カルテにMEWSやNEWSが自動計算される機能を持つ施設では、ナースがバイタルを入力するだけでスコアが表示されるため、「コールするかどうか」の判断材料として積極的に使いましょう!
直感的な不安もコールの理由になる
「数値はそこまで悪くないけれど、何か違う」という感覚も、重要なコールのサインです。RRTの設計思想において、看護師の経験的な判断(gut feeling)は正式なコール基準の一つとして認められています。
これは単なる気分の問題ではなく、経験を積んだ看護師が非言語的・視覚的な変化を捉えているためです。患者の皮膚の色・表情・呼吸パターンの微妙な変化など、数値に現れる前のサインを感知していることが研究でも示されています。
📞 コールをためらう「コールの壁」を乗り越える
RRT導入施設でも、看護師がコールをためらうことは広く認識されており、「コールの壁(call reluctance)」と呼ばれています。コールをためらう理由と、その対処を理解しておくことが重要です。
なぜコールをためらってしまうのか
主な理由として研究が指摘するのは以下の通りです。
- 「大げさかもしれない」という恐れ — 夜中にチームを起こすことへの遠慮や、「取り越し苦労だった」と思われることへの不安
- 主治医への報告を先に行うべきという固定観念 — 病棟文化によってはRRTより先に担当医に報告することが暗黙の慣習になっている施設もあります
- RRTの起動基準が曖昧 — 「どれくらいの状態でコールすればいいのか」が明確でないと判断が難しい
- 経験不足による自信のなさ — 特に新人・若手看護師は「自分のアセスメントが間違っているかもしれない」と感じやすい
コールの壁を乗り越えるための考え方
RRTは「コールしすぎて困る」システムではありません。「コールが遅すぎた」事例の方がはるかに問題になります。
多くの施設でRRTのコールを推奨する文化を醸成するために「コールして何もなかった場合は成功」という考え方を採用しています。看護師がコールをためらわないようにするため、施設によってはRRTチームのリーダーを看護師が担い、看護師から看護師へのコールにすることで心理的ハードルを下げている例もあります。
あなたが感じた「何かおかしい」という感覚は、患者さんのそばにいる看護師だからこそ気づける貴重なサインです。その直感を大切にしましょう!
📢 コール後の報告——I-SBARCで情報を伝える
RRTをコールした後、チームが到着するまでの時間と、チームへの報告内容が患者さんのアウトカムに直結します。
コール直後にすること
RRTに連絡したら、電話を切る前に病棟番号・部屋番号・患者名を伝え、「すぐ来てほしい」のか「電話相談でよいか」を明確にします。電話を切ったら、次の行動を迅速に行います。
(1) ナースコールで同僚を呼ぶ(一人で対応しない) (2) 患者のそばを離れない (3) バイタルサインの連続測定を続ける (4) 酸素・静脈路・吸引などの準備 (5) I-SBARCに沿って報告内容をまとめる
I-SBARCを使った報告の実例
I-SBARCは急変報告の国際標準的なコミュニケーションフレームワークです。
I(Identify=自己紹介) 「○階病棟の看護師の田中です。」
S(Situation=状況) 「302号室の山田様について連絡しています。10分前からSpO2が85%まで低下し、呼吸数が32回になっています。」
B(Background=背景) 「山田様は65歳男性で、肺炎で入院中5日目です。今日の昼までは98%でした。酸素は2L鼻カニューレで投与中です。」
A(Assessment=アセスメント) 「酸素投与を増量しましたが改善がなく、呼吸状態の悪化が続いています。努力呼吸があり、顔色がやや悪いです。」
R(Recommendation=依頼) 「状態が悪化しています。すぐに診ていただけますか。酸素マスクへの変更や胸部X線の指示をいただけますか。」
C(Confirm=確認) 「では、フェイスマスク10Lと胸部X線のオーダーをお願いします。復唱します——フェイスマスク10L、胸部X線ですね。」
この流れで報告できると、RRTチームが到着した際にも同じ情報をスムーズに引き継げます。報告の前に紙に箇条書きでメモしておくだけで、緊張した状況でも抜け漏れを防げます!
記録のポイント
RRTコール後は、コールした時刻・その時点でのバイタルサイン・施行した処置・RRTチームへの引き継ぎ内容を経時的に記録します。「何時何分に呼吸数が何回だったからコールした」という記録は、後から振り返る際にも重要な情報になります。
📊 施設のRRTコール基準を確認しておく
RRTのコール基準は施設ごとに細かな違いがあります。自分が働く施設のコール基準を事前に確認しておくことが、判断を速くする最も確実な方法です。
確認しておくべき4つのこと
(1) バイタルサインの数値基準 上記で紹介した一般的な基準を参考にしつつ、施設が定めた具体的な数値を確認します。ポケットメモや病棟のポスターに掲示されている場合も多いです。
(2) コール先の連絡先 緊急時に内線番号を探す時間は無駄になります。RRTの内線番号を手帳やスマートフォンの連絡先に登録しておきましょう。
(3) RRTコールと主治医への報告の順序 施設によってはRRTと同時に主治医にも連絡することが求められる場合があります。自施設のフローを確認しておきます。
(4) MEWSまたはNEWSの使い方 電子カルテでスコアが確認できるか、計算シートが病棟にあるかを把握しておきます。スコアを使う習慣をつけると、コール判断に迷う時間が短縮されます。
まとめ——今日から使えるRRT判断の一歩
RRTのコール基準は、数値の異常と直感の両方が正式な根拠になります。呼吸数・SpO2・血圧・脈拍・意識という5つのバイタルを普段から丁寧に観察し、MEWSやNEWSのスコアを味方につけることで、コール判断に迷う時間は必ず短くなります。今日の勤務が始まる前に、自施設のRRT内線番号を手帳に書いておきましょう!
あなたの次の一歩に
❓ よくある質問
Q. RRTはどんな基準でコールすればいいですか?
呼吸数8回未満または30回以上・SpO2 90%未満・収縮期血圧90mmHg未満・急激な意識変化(GCS2点以上低下)・脈拍40未満または130以上のいずれかがある場合が目安です。「何かおかしい」という直感もコールの理由として認められています。
Q. RRTを呼ぶと怒られますか?
RRTは病棟看護師が遠慮なくコールできる仕組みとして設計されています。「取り越し苦労だった」という事例は歓迎されます。コールをためらって急変を見逃す方がリスクは高く、多くの施設でコールを積極的に評価しています。
Q. コール後にRRTが来るまで何をすればいいですか?
まずナースコールで応援を呼び、現場を離れないことが最優先です。バイタルサイン測定を続け、酸素・静脈路・吸引の準備を整え、I-SBARCに沿って報告内容をまとめておきます。蘇生が必要なら一次救命処置を開始します。
Q. I-SBARCって何ですか?
Identify(自己紹介)、Situation(状況)、Background(背景)、Assessment(アセスメント)、Recommendation(依頼)、Confirm(確認)の頭文字を取ったコミュニケーションツールです。短時間で正確に情報を伝えるために急変報告に活用されています。
Q. 夜勤中にRRTコールを判断するのが怖いです
夜勤帯は特に不安が大きい状況です。MEWSやNEWSなどのスコアリングシステムを使うと「数値が基準を超えているからコールする」という客観的な根拠になり、判断の迷いが減ります。スコアが3点以上になったらコールを検討するよう施設の基準を確認しましょう。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療判断や施設の方針を代替するものではありません。急変対応の判断・処置については、所属施設のプロトコルや主治医・上席看護師の指示に従ってください。
参考情報源
- 院内迅速対応チーム(RRT)|チーム医療|久留米大学病院 (学校法人久留米大学 久留米大学病院) アクセス日: Thu Jun 04 2026 02:00:00 GMT+0200 (Central European Summer Time) https://www.hosp.kurume-u.ac.jp/introduction/team/rrt/
- RRS(Rapid Response System)|日本院内救急検討委員会 (日本院内救急検討委員会) アクセス日: Thu Jun 04 2026 02:00:00 GMT+0200 (Central European Summer Time) https://www.ihecj.jp/rrs
- 急変の発生を未然に防ぐ「RRS(迅速対応システム)」とは?|ナース専科 (ナース専科(エス・エム・エス)) アクセス日: Thu Jun 04 2026 02:00:00 GMT+0200 (Central European Summer Time) https://knowledge.nurse-senka.jp/224385/
- SBAR(エスバー)|分かりやすい報告の仕方|ナース専科 (ナース専科(エス・エム・エス)) アクセス日: Thu Jun 04 2026 02:00:00 GMT+0200 (Central European Summer Time) https://knowledge.nurse-senka.jp/1652/