高齢者の皮膚アセスメント|スキンテア・乾燥・浸軟の見極めと予防
高齢者病棟や在宅で増えるスキンテア・乾燥・浸軟の原因と分類を整理し、日常的な観察ポイントと予防ケアの手順をわかりやすく解説します。STAR分類や保湿ケアの実践法も収録。
「また皮膚が破れてしまった…」と毎日のように感じているなら、その悩みを解消するヒントがここにあります!
高齢者病棟や在宅看護の現場で、スキンテア(皮膚裂傷)の件数が増えていると感じている看護師はとても多いです。体位変換のとき、テープを剥がすとき、車椅子への移乗のとき——気づくと皮膚がめくれている。そのたびに「自分のケアが荒かったのだろうか」と落ち込む方も少なくありません。
でも、スキンテアや乾燥・浸軟は看護師個人の手技の問題だけではありません。加齢による皮膚の構造変化が根本にあり、それを理解したうえで組織ぐるみの予防策を講じることが、患者さんを守る最善の方法です。この記事では、高齢者の皮膚をアセスメントするための基本知識から、スキンテアの分類法(STAR分類)、乾燥・浸軟の見極め方、そして日常ケアに組み込める予防策まで順を追って解説します。
1. 🔬 高齢者の皮膚はなぜ傷つきやすいのか
高齢者の皮膚が脆弱になる理由を一言で言うと、表皮・真皮・皮下組織のすべてが薄く・弱くなるからです。この構造的な変化を理解することが、アセスメントの出発点になります。
加齢で起こる皮膚の構造変化
皮膚は表皮・真皮・皮下組織の3層から成ります。加齢とともに次の変化が重なります。
- 表皮の菲薄化: 表皮細胞の分裂が遅くなり、角質層が薄くなります。バリア機能が低下し、外力や細菌が侵入しやすくなります。
- 真皮コラーゲンの減少: 皮膚の弾力を保つコラーゲンとエラスチンが減り、伸び縮みへの耐性が下がります。
- 表皮-真皮接合部の扁平化: 本来はジグザグ状の接合部が平坦になり、摩擦・ずれ力への抵抗力が大幅に低下します。これがスキンテア発生の主因です。
- 皮脂腺・汗腺の機能低下: 皮膚表面を守る皮脂膜が薄くなり、水分が蒸散しやすくなって乾燥が進みます。
- 皮下脂肪の減少: 骨突出部へのクッションが減り、圧迫や摩擦がダイレクトに皮膚に伝わります。
リスクを高める因子
構造変化だけでなく、全身状態・薬剤・生活習慣が重なるとリスクはさらに上がります。
- ステロイド長期使用(皮膚の菲薄化を加速)
- 浮腫(皮膚がパンパンになりわずかな力で裂ける)
- 栄養不良・脱水(皮膚の細胞修復に必要な材料が不足)
- 放射線治療後(局所的に皮膚がもろくなる)
- 認知症による皮膚をかきむしる行動
入院時のアセスメントシートにこれらの因子が含まれているか確認し、リスクの高い患者さんを早期に把握することが予防の第一歩です。
2. 🔍 スキンテアの見極めとSTAR分類の使い方
スキンテアとは、摩擦・ずれ力によって皮膚が裂け、表皮または表皮と真皮が分離した創傷です。褥瘡と混同されることがありますが、発生機序が異なります。褥瘡は持続的な圧迫による阻血壊死が原因ですが、スキンテアは一瞬の外力で皮膚が裂けます。
スキンテアが起きやすい場面
- テープ(サージカルテープ・固定テープ)を剥がすとき
- 体位変換・移乗でシーツや衣類に皮膚がこすれたとき
- 転倒・ベッド柵への接触
- リハビリ中の装具着脱
- 拘束帯の使用
STAR分類で重症度を判断する
スキンテアの標準的な分類として、国際的にSTAR(Skin Tear Audit Research)分類が用いられています。皮弁(剥がれた皮膚の弁)の有無と状態、組織欠損の程度で5段階に分けます。
| 分類 | 状態 | ポイント |
|---|---|---|
| 1a | 皮弁で創面を完全に覆える | 皮膚色が正常または蒼白 |
| 1b | 皮弁で創面を完全に覆える | 皮膚色が暗い/黒紫色 |
| 2a | 皮弁で創面を部分的にしか覆えない | 皮膚色が正常または蒼白 |
| 2b | 皮弁で創面を部分的にしか覆えない | 皮膚色が暗い/黒紫色 |
| 3 | 皮弁がない | 組織が露出 |
観察時は「皮弁が残っているか」を最初に確認します。皮弁が残っていれば丁寧に元の位置に戻し、剥がれないように固定することで創の自然治癒を促せます。皮弁の色が暗い場合は壊死の可能性があるため、医師・皮膚科専門看護師(WOCN)に相談してください。
スキンテアの初期対応手順
(1) 出血の確認と止血(清潔なガーゼで圧迫)
(2) 生理食塩水または水道水でやさしく洗浄(こすらない)
(3) 皮弁が残っている場合は湿らせた綿棒でそっと元の位置に戻す
(4) 非固着性ドレッシング材(シリコンフォーム等)で覆い、剥離刺激の少ないシリコン粘着テープで固定
(5) STAR分類で記録し、サイズ(縦×横cm)・発生部位・原因を記載
(6) 医師・リーダーへ報告
処置後の観察ポイントは、感染徴候(発赤・熱感・腫脹・滲出液の増加・悪臭)と皮弁の生着状況です。交換時は「引っ張って剥がす」動作が再損傷の最大原因になるため、必ず端から少しずつ、皮膚を押さえながら剥がします。
3. 💧 乾燥・浸軟の見極めと対応
乾燥と浸軟はどちらも「皮膚のバリアが崩れた状態」ですが、発生機序と対応が正反対です。混同すると保湿剤を浸軟部位に塗って悪化させることがあるため、視診と触診で確実に鑑別します。
乾燥肌(ドライスキン)の観察と対応
見え方: 皮膚が白く粉を吹いたようにカサカサしている、細かいひび割れ(亀裂)がある、鱗屑(フケのような細片)が落ちる。
触ると: ざらざらしていてかたい。引っ張ると弾力がなく、戻りが遅い。
好発部位: 下腿(特に脛骨前面)、足背・足底・踵、前腕、肘・膝。
対応:
- 入浴・清拭後の水分が残っているうちに保湿剤を塗る(3分以内が目安)
- 保湿剤は薄く伸ばさず、手のひらで包み込むように肌に乗せる
- 石鹸は弱酸性のもの、強くこすらずウォッシュタオルを使わない
- 室温が低い・空調が乾燥しやすい病棟は加湿器の活用も検討
浸軟(しんなん)の観察と対応
見え方: 皮膚が白くふやけている、やわらかくなって表面がよれている、おむつや創傷周囲など湿潤環境に接した部位に多い。
触ると: ふにゃふにゃとやわらかく、少し触れただけでもずるっと表皮が剥がれそうな感触。
好発部位: おむつ内の陰部・臀部・鼠径部、ストーマ周囲皮膚、創周囲(過剰な浸出液)。
対応:
- まず原因となる湿潤を取り除く(おむつ交換頻度の見直し、排液コントロール)
- 保湿剤ではなく撥水性の皮膚保護クリーム(酸化亜鉛含有や被膜形成剤)を使用
- おむつ内の蒸れには吸収性の高いパッドへの変更を検討
- ストーマ周囲は皮膚保護材のフランジ選択を見直し、排泄物が皮膚に触れる時間を最小化
乾燥と浸軟を見誤らないチェックポイント
混乱しやすいのは「白くなっている」という見え方が共通している点です。以下の3点で区別します。
- 場所: 乾燥は露出部・骨突出部に多い。浸軟は湿潤環境に接した部位に多い。
- 触感: 乾燥はかたくざらざら。浸軟はやわらかくぬめっとしている。
- 境界: 乾燥は全体的にかさつく。浸軟は湿潤源に接した部位だけ白く、境界が比較的はっきりしている。
4. 🛡️ 日常ケアに組み込む予防策
スキンテアや皮膚トラブルの多くは、日常のケアの仕方を変えることで予防できます。個人の努力だけでなく、チーム全体でケアの標準化を図ることが持続的な予防につながります。
日常観察での皮膚アセスメントの組み込み方
特別に時間を取ろうとすると後回しになります。既存のケアの流れに「ついでに見る」習慣を組み込むのが現実的です。
- 清潔ケア(清拭・入浴)のタイミング: 体を拭く前に全身をさっと目視。乾燥・発赤・浸軟・表皮剥離がないか確認。
- おむつ交換のタイミング: 陰部・臀部・鼠径部の浸軟・発赤・皮膚の白化をチェック。
- 体位変換のタイミング: 骨突出部(仙骨・踵・肩甲骨・後頭部)の発赤・皮膚損傷を確認。
- ドレッシング交換・テープ除去のタイミング: テープ周囲の皮膚損傷・剥離の有無を確認。
記録に残す際は、部位・面積・色・浸出液の性状・匂いの5点を簡潔に記載すると引き継ぎがスムーズになります。
テープ・固定材の選び方と剥がし方
テープ関連のスキンテアは予防できる割合が高いです。
選び方のポイント:
- シリコン粘着タイプ(剥離刺激が少ない)を優先
- 頻繁に交換が必要な場合はループ粘着や面ファスナー留めに変更
- サージカルテープは皮膚の脆弱な患者には避ける
剥がし方のポイント:
- 「引き剥がす」のではなく「皮膚をテープに向かって押しながらゆっくり端から折り返す」
- 剥離剤(リムーバー)を使うと摩擦が大幅に減る
- 貼り直しは同じ部位を避け、皮膚が休める時間を作る
保湿ケアの標準化
病棟全体で保湿ケアの手順を統一すると、実施率が上がりスキンテアの発生件数が減ることが報告されています!
- 保湿剤を各ベッドサイドに置き、清拭後すぐ塗れる環境を作る
- 保湿剤の量の目安: ローションタイプなら1回に手のひら2枚分程度、クリームタイプなら直径2cmをこんもりと
- 下腿は特に乾燥しやすいため、入浴・清拭後以外にも日中1回追加するケースも多い
- 保湿効果の高い成分: ヘパリン類似物質・尿素・セラミド・グリセリン。傷がある場合はヘパリン類似物質の使用を医師に確認
移乗・体位変換での皮膚保護
- 移乗時はスライディングシートやトランスファーボードを使い、皮膚の摩擦を減らす
- ベッドリネンのしわを伸ばし、皮膚に圧迫・摩擦が集中しないようにする
- 四肢の保護にはアームカバー・レッグカバーを活用する(薄い布でも大きな効果)
- ベッド柵にはカバーを付けて、寝返りや起き上がり時の接触を緩和する
5. 🧾 スキンテア予防を支える多職種連携
皮膚トラブルは看護師だけで解決しようとすると限界があります。多職種の力を借りることが患者さんを守る近道です。
皮膚科専門看護師(WOCN)との連携
WOCNは創傷・オストミー・失禁を専門とする認定看護師です。対応に迷う創傷や、繰り返すスキンテア・褥瘡には早めにWOCNへのコンサルテーションを依頼します。処置方針だけでなく、ドレッシング選択・記録の仕方・家族への説明まで相談できます。
栄養士との連携
皮膚の修復には適切な栄養が欠かせません。アルブミン低値・BMI低下・食事摂取量の減少がある患者さんは、栄養士と連携してエネルギー・タンパク質・亜鉛・ビタミンCの補給計画を立てます。
リハビリスタッフとの連携
理学療法士・作業療法士は移乗・体位変換の場面に直接関わります。スキンテアが起きやすい患者さんの情報を共有し、装具の着脱手順やリハビリ中の皮膚保護について話し合います。
家族・介護者への指導
在宅に帰る患者さんや、施設から一時帰宅する患者さんの場合、家族・介護者が正しい保湿ケアとテープの扱い方を知っていることが再発防止の鍵です。指導のポイントは次の3点に絞ると伝わりやすいです。
(1) 入浴後に保湿剤を塗る(どの製品をどこに)
(2) テープは端から折り返して剥がす(引っ張らない)
(3) 皮膚が破れたらすぐ医療機関に連絡する
高齢者の皮膚アセスメントは「観察する→記録する→チームで共有する→予防策を実行する」のサイクルを回すことが本質です。今日のケアが終わったら、1人だけでも四肢の皮膚状態を意識して観察してみてください。それが積み重なって、病棟のスキンテア件数を減らす最初の一歩になります!
あなたの次の一歩に
よくある質問
Q. 高齢者のスキンテアはなぜ起きやすいのですか?
加齢により表皮と真皮の結合が弱まり、わずかな摩擦やずれでも皮膚が裂けやすくなります。乾燥・薄皮・浮腫・ステロイド長期使用なども脆弱化を促進するため、日常ケアでの力加減と保湿が重要です。
Q. スキンテアの重症度を判断するSTAR分類とは何ですか?
STAR分類はスキンテアを皮弁の有無・皮弁の状態・欠損の大きさで1a/1b/2a/2b/3の5段階に分ける分類です。皮弁が残っているか否かで処置方針が変わるため、観察時に必ず確認します。
Q. 皮膚の乾燥と浸軟はどう見分けますか?
乾燥は皮膚がカサカサして白く粉を吹いたような状態。浸軟はおむつや創周囲が長時間湿潤にさらされ、皮膚がふやけて白くなった状態です。触ると乾燥はざらつき、浸軟はしっとり柔らかく弱くなっています。
Q. スキンテアの応急処置で最初にすることは何ですか?
まず出血を確認して圧迫止血し、皮弁が残っていれば生理食塩水で洗浄して元の位置に戻します。その後、非固着性ドレッシング材や剥がれにくいシリコン粘着テープで固定し、処置後は必ず記録と報告を行います。
Q. 保湿クリームは1日何回、どのタイミングで塗ると効果的ですか?
一般的には入浴・清拭後すぐと就寝前の1日2回が推奨されます。皮膚が軟らかくなったタイミングに塗ることで吸収がよく、バリア機能の回復を助けます。発赤や浸軟がある部位は医師・皮膚科専門看護師に相談してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療行為を推奨するものではありません。患者さんの皮膚トラブルへの対応は、担当医師・皮膚科専門看護師(WOCN)等の専門窓口にご相談ください。
参考情報源
- 褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版) (日本褥瘡学会) アクセス日: Thu Jun 04 2026 02:00:00 GMT+0200 (Central European Summer Time) https://www.jspu.org/jpn/info/guideline.html
- 看護業務基準(2021年改訂版) (日本看護協会) アクセス日: Thu Jun 04 2026 02:00:00 GMT+0200 (Central European Summer Time) https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/gyomu/kijyun.pdf
- 高齢者の皮膚・排泄ケア (厚生労働省) アクセス日: Thu Jun 04 2026 02:00:00 GMT+0200 (Central European Summer Time) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html